映画ゴッドファーザーはコルレオーネ家のホーム・ムービーだ!
自分が生まれる前に製作されたこの映画を、初めて観たのは二十代半場の頃で、それまでは単なる昔のマフィアを描いた映画という認識でしかなかった。この映画タイトルだけ知っていても、観た事がない人は皆そういう認識でしかないだろう。
シチリアから移民してアメリカへ渡り、暗黒外でのし上がっていき、ニューヨークで強大なマフィア組織を築き上げた偉大な父親。その息子達は、家族として、また組織の一員としてファミリービジネス(組織犯罪)を支える。
この話は単なるマフィア映画ではなく、コルレオーネ家のホーム・ムービーだと観終わってからは感じる。約三時間にも及ぶこの映画は、中だるみ的な要素が一切なく、ストーリー展開の良さやそれに伴う緊迫感を三時間の間、常に持続させている事だ。
静かに流れるストーリーの中で、暴力的且つ衝撃的なシーンが随所にちりばめられているのがこの映画の特徴だとも言える。マフィア映画といっても派手なシーンばかりではなく、また監督のフランシス・フォード・コッポラは暴力的なシーンを嫌った。配給会社のパラマウントからもっと暴力的なシーンを増やせといわれた程だ。
この映画の製作に関して言えば、それはコッポラと配給会社パラマウントとの確執の多さだろう。この映画で重要な役はドン・コルレオーネと、その息子マイケル・コルレオーネである。
ドンにはマーロン・ブランド、マイケルにはアル・パチーノ
このキャストについてコッポラはドンにはマーロン・ブランド、マイケルにはアル・パチーノと決めていた。パラマウントは猛烈に反対した。マーロン・ブランドはパラマウント側から自分勝手でギャラを多く取るという役者として嫌われていた。
またアル・パチーノはこの頃まだ無名の役者だったのでパラマウント側はもっと名のなる役者を使いたがった。コッポラはこれに対し、非常にこだわった。
結果、了承を得たが、その後の撮影時のスタッフの態度は最悪だったという。コッポラはスタッフ達にあの監督は最悪だと影で言われ、パチーノは遠まわしにあんな役者は要らないと言われた。
イタリア系アメリカ人市民権連盟
撮影が開始されても、まだ決まっていない役があった。ドン・コルレオーネの忠実な部下ルカ・ブラージ役である。
この役自体、原作では見た目も役どころも危ないのだが、撮影時に見学(監視)に来ていた本物のマフィアのボディーガードをスカウトしたのである。これは映画としても大成功であったと思う。やはり本物に仕えるものが、ドン・コルレオーネの忠実な部下として演技しているのはリアリティあふれている。
そもそも何故、本物のマフィアが撮影時に見学という名目の監視を行っていたかというと、この映画を撮影する直前、イタリア系アメリカ人市民権連盟から抗議があった。簡単にいうと、この映画を上映する事によりイタリア系アメリカ人の偏見につながるという事だ。
そしてこの市民権連盟の会長を務めているのがジョー・コロンボという人物で、この人物が本物のニューヨーク五大ファミリーのコロンボファミリーの長だったのである。
まず、彼らの要求は映画の中で『マフィア』、『コーサ・ノストラ』といった直接的なマフィアの表現を排除しろというものだった。この要求は呑んだものの、もともとこの製作時にはテレビや映画等でそういった言葉を使用するの禁止されていたとの事。もちろんこのゴッドファーザーでも使われていない。